☆空が青いから☆

お知らせ なかよし 2019.09.17

『くも  空が青いから白をえらんだのです』

 

 驚いた。省略の効いた、なんという美しい一行詩だろう。

 まず、作者に詩を朗読してもらう。ところが、うまく読めない。うつむいたまま早口で読むので、「前を向いて」「ゆっくり」と、何度かやり直して、やっとみんなに聞こえるように読めた。

 

 そのとたん、盛大な拍手が沸いた。すると、その子が突然「先生!」と手を挙げたのだ。普段は自分から発言などしない子だから、びっくりした。「ぼく、話したいことがあるんですが、話してもいいですか。」と言う。「もちろん。どうぞ、どうぞ。」と言うと、いきなり堰を切ったように語り出した。

 

「ぼくのお母さんは今年で七回忌です。お母さんは体が弱かった。けれど、お父さんは、いつもお母さんを殴っていました。お母さんは亡くなる前に、ぼくに “つらくなったら空を見てね。私はそこにいるから” と言いました。ぼくは、お母さんを思ってこの詩を書きました。」

 あまりの話にあっけにとられていると、次々に手が挙がった。

 

「ぼくは、〇〇君は、この詩を書いただけで、親孝行だと思います。」

「ぼくは、〇〇君のお母さんは、きっと雲みたいにふわふわで優しい人かなって思いました。」

「ぼくは、〇〇君のお母さんは雲みたいに真っ白で清らかな人だったんだと思いました。」

「ぼくは、ぼくは・・・」

と、言いよどんだ子は、

「ぼくは、お母さんを知りません。でも、この詩を読んだら、空を見たら、ぼくもお母さんに会えるような気がしました。」

と言って、わっと泣き出してしまった。みんなの子が、その子を慰めた。

 

 友の拍手で、一人の子の心の扉が開く。すると、呼応したように、次々にみんなが心を開き、語り出す。思いがけない優しさがあふれ出してくる。奇跡だと思った。

 

 この奇跡は、その場にとどまらなかった。「母を知らない」と告白したその子は、自傷行為の絶えない子だった。それが、この日を境に、ぴたりと自傷行為が止まった。笑顔が増えた。

(『奈良少年刑務所詩集』 新潮文庫)

 

  

 運動会当日、中央小学校上空の空は青いか・・・